悪魔とタンゴ。

反芻ばかりしてないで、感想を書こう(笑)
でも、長いのでたたんでおきますー。
2分前に滑り込んだ席は通路沿いの良席でした。舞台の定式幕とバルコニーの提灯で松竹座?な感じ。
実は、どこかの国の、どこかの時代の歌舞伎一座が演じる「ファウスト博士」っていう、二重芝居になってたそうで。パンフ読んで知りました…。
舞台の後方は、色んな部屋や階層が透けて見えたり、鏡面になったりやったんですが。この透けて観えてる部屋が、歌舞伎一座の楽屋裏っていう設定なのですな。てっきり、地獄というか異界を表現してんのかと思ってました。地獄は身近なものですよー、てなことで。
そうか、アタシは気付いてなかったけど、萬斎さんもそこにいたそうなんで、ファウスト博士が地獄にいるのは、おかしいもんな(笑)
特に芝居上、二重芝居が目立つというか、表立つところはなく、黒子とか、舞台下のセリを見せるのとかは、滑稽味を出すためかと思ってたや。
この二重構造は原作にあるんやなく、蜷川演出でやったみたいで。確かに本筋の「ファウスト博士」だけを追うと、シェイクスピア程の重さはないし、さすがの演出やなー!と。
後半、楽屋裏に戻った長塚くんの頭から、芝居で使った鹿の角が取れない、みたいな演技してて。これも、二重芝居を解してみたら興味深い演出やなー。あの楽屋裏の芝居は、蜷川演出なのか各人演出なのか??演出家の多い芝居やから(笑)
こう二重芝居を踏まえて、もう一回観たいなー!放送やDVDやとアングル限られるんで、自由な視線で裏の芝居も楽しみたーい!
そしてもう一度観るなら、反対側通路席を…(笑)やって、長塚くんが肩抱いて(?)「あなたにお見せしよう!」て言うてくれるんやもん(笑)
脚本・演出の長塚くんはもちろん、やっぱり役者としても好きやなー。マチャピコと同じで、自らが演出家やから、ちょっとした何でもない時の、たぶん演出もついてないような時の、演技が好きだ。
横田さんは、やっぱりじゅんさんに似てる!萬斎さんの蜷川ハムレットでホレイシオ役観た時も「じゅんさん?」と思いましたが、また今回も「あれ?じゅんさん?」と思った(笑)声の質感とか(大きさはじゅんさが勝つけど)言葉の間の感じとかが似てて!アタシのすぐ横を駆け抜けた時に、間近で拝見した顔も似てるんですよね〜。男前。
芝居の芝居ってことで、舞台仕掛けも大がかり。色とりどりな悪魔達はフライングしまくりで。悪魔になったり、他の役やったりは、大変そう。勝村さんもフライングしてましたよ。バッサバサと(笑)
そう!萬斎さんも素晴らしかったんですが、勝村さんカッコ良かったー!!やっぱり舞台で観るべき人やな!と思った!
まず、普段の優しげな役でも舞台ではやっぱり発声からして違うもんなー。
それが、また今回、悪魔って!もうカッコいい…!!ファウストに地獄の話を聞かれて、ルーシファとともに堕天した苦しみを怒りと共に語るところからして、もー勝村さん素晴らしいの!
衣装も、黒のファウストに対して、白で統一されてて。悪魔が白って、素晴らしい演出やなー!腰の絞りが高めな位置のマキシ丈のコートで。教皇が十字を切る場面で、さりげなくコートの裾で視界を遮って、嫌そーな顔してるのとかも良い!
あと七つの大罪のふしだらが踊る時、音楽に合わせて小さく踊って「Uh!」なんて言うてんの可愛い(笑)
ファウストを悪魔的に甘く唆すってよりは、未知の世界に浮かれたつファウストの保護者的な感じのメフィストでした。
でも、怯えるファウストを逃さないと笑む姿は悪魔的に魅力!
これ萬斎さんと勝村さんの役が入れ替わったら、まさに唆される弱き人間ファウストと、悪魔的なメフィストになったんやろうな。この配役の妙が良かった!
萬斎さんのファウストは、俗欲から魔術をってんでなく、知識欲からって感じ。神への救いを捨て切れず、苦悩する様は美しく、教皇にいたずらする様は無邪気で可愛く。そらメフィストも気に入るわ。
元より身についてる所作の美しさもありますが、床に足をダン!て踏み鳴らす、打ち鳴らすのが、うまいと言うか、綺麗と言うか!こういうのは狂言の世界で身に付けはったことなんやなー、と。
その狂言とは違う、軸の取り方・情感の乗せ方に苦労されたという、勝村メフィストとのタンゴ!これがめっちゃ素敵で!!
萬斎さんのファウストが女性パートなんですが、確かに軸は預け切れてないかな?って部分はあれど、そりゃ勝村さんかて相手の軸を支え受けて踊るなんて、今回の稽古が初でしょうし(笑)
狭い机の上で踊るのに、二人とも華麗なステップで!タンゴの足の掛けとかも観れたしvv
情感も、なんの!萬斎さんの視線に流し方に、めっちゃ情感乗せてはりましたよー!
片やサイケな坊ちゃん刈り、片や口髭のおっさん二人なんですが、何だか妖しい世界!?て、ドギマギしてたら、どうも、敢えてそういう蜷川演出やとか。
そんな、そこだけ別世界なくらい惹きつけておいて、踊り終わった後に萬斎さん自ら「この茶番は何だ?」って、落とすのに、みんな笑って現実(芝居)に戻るっていう。この演出の上手さもさることながら、タンゴと落としとの落差を大きく付けれるお二人の上手さが!
ファウストの最期、メフィストに地獄に連れられて行く時も、メフィストの腕の中でタンゴのポージングのように足を伸ばしてはりましたねー。
最後、口上読みが終わって、定式幕を引くのはメフィストで!走り引いた最後に、まじないとウインクを客席にくれて、もー!最後まで、ばっちり芝居の世界に引き込んでくれましたよ!
今まで舞台と言っても観たのは映像でばかりでしたが、ナマの舞台を観たら、本業の狂言も、そりゃ観に行きたくなるわなぁ〜!
勝村さんも久々に舞台で観て、やっぱり第三舞台出身の役者は、アタシの中でハズレがないな、と。たとえ中心的な華々しさはなくとも、舞台演技の上手さは、さすが!
それに対する萬斎さんの華とのバランスが、食い潰し合わず良かったな〜。DVD欲しいなー!